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都知事選『鳥越候補者』への応援を見て、
我々は今でも戦前の過ちを繰り返していると怖さを覚えた


『日本は何故戦争に突き進んだのか、そして暴走する軍部にブレーキを掛ける勢力は無かったのか』を理解したくて、色々な本を読んでいるところ。
一つは何故軍部が国をコントロールする権力を持てたのか、さらに三権/行政、議会、司法は軍部の暴走に何故ブレーキを掛けられなかったのか、そして我々(議会選挙を通じて三権を選ぶ市民)は何故軍部の暴走を許し、さらには一億玉砕に賛同さえしたのか?
この三つの疑問について、主に「同じことが今でも起こり得るのか」について色々と考えている。
一つ目/軍部権力増大の原因は大日本帝国憲法の欠陥(軍の統率権は天皇のみが有す)、二つ目/三権弱体化は5・15等を契機として増大した軍の権力に三権が屈服した(恐れた)ためと理解している。
今の日本を指して『軍国主義復活、戦争前夜に似ている』との意見をいわゆる進歩的文化人や市民運動家から聞くことが多い。
しかし、今は民主主義が定着し、時の権力は選挙で我々自身が選択し(また選挙でいつでも権力の首をすげ替えられる)、そして三権独立がシステムとして確実に成立しており、さらには自衛隊は文民統制されていて、軍国主義復活等は我々に意味の無い恐れを与えるだけのとぼけた発言だと思っている。
逆に我々/一般市民に恐れを与えてコントロールしようとする時の権力と同様の「権力志向」の怖さを感じさえする。
そして、最後の三つ目、我々/一般市民は何故軍部になびいたのか、そして今でも同じことが起きるのかについては明確な答えが見いだせていなかった。

話はがらっと変わり、2016年7月の東京都知事選挙について。
辞任した前知事に対し、『選んだ都民が悪い』という意見も聞かれたが、前回の選挙では選択肢が無い中で自分はいやいや投票をしたのを覚えている。
その意味では、今回の選挙は選択肢が複数あり、投票のためにわざわざ日本に戻る価値のある有意義な選挙だったと思っている。
その都知事選で気になったのが鳥越候補者。
都民とは関係の無いテーマで立候補をした変な進歩的文化人との印象だったが、週刊誌に掲載された女性問題への対応が醜にくかった。
かなり具体的な問題点を指摘されたにも関わらず、いきなり司法に訴え、提訴していることを理由に何も明らかにしなかった。
時の権力へ抵抗するジャーナリストを標榜する人が、権力(司法)に訴えることで相手を脅し、さらに権力(司法)を利用して何も回答しないというのは卑怯だと思っている。
事故を起こした原子力発電所から所員が撤退したと朝日新聞が誤報した所謂『吉田事件』を自分は思い出した。
吉田所長に関する著書を持つ門田氏が、朝日新聞に『事実と異なる』と唱えたのに対し、朝日新聞は誹謗中傷したとして門田氏を訴えると脅していた。
ジャーナリズム同士が意見(事実の評価)を論じ合うことはせず、いきなり司法という権力を使って口封じをしようとした点で、朝日新聞と鳥越候補者は同じ穴のムジナで、卑怯だと思っている。(後日、朝日新聞は誤報と表明)

さて、卑怯な手口で女性の人権を踏みにじったと言える鳥越候補者に対し、司法に提訴した後も、応援を続けた人達の感覚が分からない。
応援者の中には、日頃から時の権力に対抗すると共に人権を重んじる著名な進歩的文化人や市民運動家が多かった。
何故彼ら(彼女ら)は、鳥越候補者を応援し続けたのだろうか。
自分には『野党連合が応援しているから』と言う以外の理由が見つからない。
密室の中で明確な理由も明かされずに(明確な政策論議も無いままで)決められた候補者に対し、理由も確認しないまま無条件で応援したと理解している。
自分がこの時にふっと思い出したのが、冒頭の我々/一般市民は戦前に何故軍国主義に何故流されていったのかの疑問について。
今の時代でも、進歩的な考え方をする人が、無条件であっさりと長いものに巻かれている今回の事実。
戦前の我々も、今の我々も、何も変わっていないのではないだろうか。
戦争に突入していった一つ目と二つ目の原因は、民主主義と言うからくりにより再発することは無いが、三つ目の原因に対し我々が今でも長いものに流されてしまう事実を、今のこの時代にまさしく目の当たりにして、怖い思いがした。
そして、無条件で応援した彼ら(彼女ら)から反省の弁が今もって全く聞こえて来ないのが、さらに恐ろしいと思っている。
(週刊誌報道へ回答しないことを理由として鳥越候補者の応援を断った宇都宮氏は、彼の政治信条には賛同しかねるが、筋が一本通った立派な方だと思っている)


2016年9月15日