ルーズベルトの責任

第2次世界大戦が始まり、英国がドイツに敗れる危機を迎えても、米国は平和主義(孤立主義)に徹していたけれど、この時の米国の状況が今の日本と驚くほど似ている。
「ルーズベルトの責任」の読書感。


1万円を投資した「ルーズベルトの責任」上下巻を、1ヶ月掛けてやっと読み終わった。
長年の疑問が氷解すると共に、新たに思うところも一杯あったので、ちょっと長めの感想を。


まず、この本には何が書かれているのか。
米国が参戦しないと英国がヒットラー・ドイツに敗れ、米国にも安全保障上の危機が訪れるというルーズベルト大統領の基本認識がある一方で、選挙公約として米国民に約束していた平和主義(=孤立主義)のため、当時の米国は自国領土が直接攻撃されない限り参戦することが出来なかった。
そのブレークスルーとして、米国に戦争を仕掛けるように日本を追い込み、米国領土(ハワイ真珠湾)を攻撃させ、80%が不戦指示だった米国世論をヨーロッパ戦線も含めた参戦指示に一気に持ち込もうとルーズベルト大統領が画策したという内容。
そのことを、終戦の3年後(つまり67年前)に、客観的な事実の積み重ねから解き明かした米国歴史協会会長の本。


そんな米国の策略があることも見抜けずに、米国に戦争を仕掛け、国を消滅寸前まで追い込んでしまった日本をコントロールしていた軍人達の無能さは隅に置き、強く思ったことが三つ。

一つ目は、
日本が軍国主義に振り廻され「一億玉砕」と言っていた時に、米国では戦争中でも議会制民主主義が継続し、立法(議会)が行政(政府)を常に監視すると共に、大統領選挙まで実施している事実。
この両国の民度(政治意識)の差には愕然としてしまう。


二つ目は、
大統領が米国民を騙して戦争を始めたと言う観点から見れば、日本が攻め込む様に仕向けながらも「日本政府とは平和な関係が継続している」と言い続けたルーズベルト大統領も、そして有りもしなかった大量破壊兵器を理由にイラクに攻め込んだブッシュ大統領も、同じ孔のムジナ。
しかし、米国の世界との関わり方に第2次世界大戦の前後で大きな差があることに改めてビックリする。
斜に構えて「孤立主義」だったのが、「世界の警察」として他国に積極的に踏み込む様になった。
上映中のクリント・イーストウッドの映画「アメリカン・スナイパー」では、「イラクでイラク人を狙撃するのはアメリカを守るため」と終始言い切っている。
勝手に他国に乗り込んでおいて、何を言っているのかと思うけど、こんな状況は第2次世界大戦以前の米国では有り得ないこと。

三つ目は、
議会制民主主義が定着し、軍は文民統制されている中で、凝り固まった平和主義。
第2次世界大戦前の米国の形だけど、これって唖然とするほど今の日本そのもの。
ヒットラー・ドイツに敗れそうな英国を助けるために、集団的自衛権から参戦という選択枝もあった訳で、ますます今の日本との類似性を感じる。
今の日本を指して軍国主義復活とか戦争前夜に似ているとか言われることが多いけど、そんなピントのずれた論議をするのでは無く、ルーズベルト大統領が「集団的自衛権を堂々と行使せず、国民を騙して米国を戦争に引きずり込んだのは何故か」を論議した方が、よっぽど今の日本のためになると思う。


以上、ちょっと長めの読後感。
直訳過ぎて読みにくい文章だけど、読む価値が大いにある。

2015年3月5日 Facebookより